研究概要 |
(1)学生の姿勢調整:無意識に読み書きを行う場合と集中する作業を行う場合の姿勢について学生を被験者にして調査と実験を行った。結果は読む時より書く時の方が視線距離が短く平均値は約26cmであった。集中する作業を行う場合は,全体の約65%の視線距離が20cm以下であり,集中状態において近業になる易いことが実験的に確かめられた。このことから今後近視になる学生の増加が懸念される。 (2)眼性疲労負荷による視力特性:まず初めに,眼精疲労負荷時における作業距離を一定にするために,被験者による精度の悪化や負荷距離による応答の変動等があっても,安定な負荷を加えることができるようにするために距離測定装置の開発を行った。被験者の眼球と筆記文字の距離を,文字がはっきり見える限界の近姿勢と遠姿勢との2点について実験を行った。これらの距離を本装置とバイオフィードバックにより一定に保った状態で,英語文章に視点を集中させ丁寧に鉛筆でなぞる眼精疲労負荷を5分間加え,その直後に正答率50%の距離でランドル環20個の正答率を測定し,正答率の変化について検討した。次に,眼精疲労負荷を10分間にして同様の実験を行い,5分間と10分間との比較検討を行った。結果は,筆記時に遠姿勢を保った場合,視力の改善あるいは維持される傾向が見られ,逆に近姿勢を保った場合,視力の改善あるいは維持される傾向が見られ,逆に近姿勢を保った場合,視力の悪化傾向が見られた。特に,近姿勢では眼精疲労負荷時間が長い程視力の低下が激しいことが分かった。また,以前に視力の基礎特性を測定した被験者の中で1ヶ月後に視力が低下した被験者を選び,視作業の適正距離を意識して生活してもらい,3週間後に視力の基礎特性を測定した。その結果は約2ヶ月前とほぼ同様の特性を示し,視力が回復していることを示し,姿勢の善し悪しは視力に大きく影響することが分かった。
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