研究概要 |
大学入試等,障害受験生に対する公正かつ適切な試験時間延長量の推定理論を開発する.現在,我が国と米国の障害受験生に対する試験時間の延長量には大きな差異がある.また,我が国の共通一時試験の障害受験生の得点分布も時間延長の必要性を示唆している. 本研究は,大学入試試験の国・数・英の三教科について,点字使用の視覚障害受験生に対する公正かつ適切な試験時間の延長量を推定する理論を二年計画で研究した. 従来記録が困難であった試験の解答過程を自動的に記録し分析可能にするため,ペン・コンピュータを使用したコンピュータライズド・テスト・システムを開発した.性能を評価するため,ペ-パ-・テストと本コンピュータライズド・テストのテスト方式の違いが解答所要時間や得点等に及ぼす影響を分析した結果,コンピュータ・テストでペ-パ-・テストの解答過程を推定できることが明らかとなった.質問紙調査の結果も本システムの画面の見やすさや操作性はマークシート解答方式のペ-パ-・テストとほぼ同様であった. 本システムと視覚障害受験生の点字問題の解答過程を自動的に記録するため新開発したシステムとを使用し,試験時間を制限しない作業制限法における健常受験生の墨字問題の解答過程と視覚障害受験生の点字問題の解答過程を記録分析した.その結果,従来経験則にすぎなかった障害受験生に対する試験時間延長措置の適切性の根拠が初めて定量的に明らかとなった.また,現在の試験時間延長量をより適切にするためのデータが得られた. 最後に,作業制限法のデータから視覚障害受験生に対する公正かつ適切な試験時間延長量を推定する一方法を提案する. 今後,一般に試験は試験時間を制限する時間制限法で実施されているため,社会的により説得力のある理論を開発するためには本理論の吟味実験を必要とする.
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