研究概要 |
MFFテストにより,被験者の認知スタイルを反応が速く誤数が少ないFA型8名,反応が速く誤数が多いFI型35名(衝動型),反応は遅く誤数が少ないSA型29名(熟慮型),反応が遅く誤数が多いSI型5名に分類した。これらの被験者に呼吸停止・心停止後0.5分にセットされたダミ-に対して,救急蘇生活動(CPR)を実施させた結果,深部体温はFA,FI,SA型で0.07〜0.17℃,表面体温はFI,SA型で0.13〜0.24℃と有意に上昇した。心拍数はどの認知スタイルでも1,2分後には29〜48の有意な上昇が認められた。また,CPR開始前の心拍数は平常時よりも有意に高値であった。STAIの特性不安得点はSA,SI型で高不安状態にあったが,CPR実施後の状態不安得点はどの認知スタイルでも高不安状態にあった。従ってCPR場面では生体負荷が大きく,高緊張状態にあることが明確となった。 認知スタイル別の蘇生率はFA型62.5%,SA型48.3%,SI型40.0%,FI型31.4%の順であり,A(正確さ)要因が関与していることが示された。平均蘇生時間は171.88±25.01秒であった。CPRを心マッサージの手の位置,強さ,呼気吹込み不良数,状態観察・脈拍観察時間についてA,F(速さ)の2要因から分析すると,心マッサージの強さは2要因と有意な関連が認められた。また,心マッサージに要する時間(テンポ)と手の位置・強さからみた心マッサージ不良数は認知スタイルとの関連が認められ,反応が速い型はCPRにおいても心マッサージ時間が速く,誤数が多い型はCPRにおいても不良数が多かった。また,呼気吹き込みに要する時間はFI型とSA型は認知スタイル上の反応時間と同様の結果が示された。以上の結果からCPRの教育を行う場合にも認知スタイル上の特質を考慮した指導が重要であることが明確となった。特に蘇生群の心マッサージ時間は非蘇生群より長かったことから,反応時間が短いF型ではゆっくりと落ち着いて実施するように指導する必要がある。
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