研究概要 |
1.平成6年度の研究成果 算数・数学についての認知構造を評価するための問題を作成して,小6,中1,中2年生に実施した。彼らの評価問題への反応,プロトコールへの応答を分析した結果,ミスコンセプションなるものが解決されないままに進行している子供が多いという事実が見出された。これらのミスコンセプションはcompartmentalization(文脈に直接的には関連しない考え方)oversimplification(誤答になる過度な一般化),self-restriction(条件に拘束される考え方)等に分類できた。 2.平成7年度の研究成果 ミスコンセプションの原因,性質を検討して,ミスコンセプションの解消を目標とする授業モデルを構築した。授業モデルの特徴は,子供に提示する教材と教授ストラテジーにある。教材はcritical課題とassimilation課題の二種類でミスコンセプションが生じている子供に,考え方の不適当さおよび,修正の必要性を認めさせる課題である。critical課題はミスコンセプョンと正反応とが並べられている問題であり,表現された考え方の導かれた思考過程を批評しあうもである。assimilation課題はcritical課題を通して形成された新しい心的構造が妥当で,後の学習に活用できるものであるかを評価する問題である。開発した両課題の性質は,子供が主体的に活動できる要素を含むのでミスコンセプションの解消には有効である。 computer映像を活用しながら,複数の問題から数学関係を導く類推,及び数学概念の多様な表現を強調する教授ストラテジーは,ミスコンセプションの解消に有用な手法といえる。考案した授業は,学校数学カリキュラムのある時点で計画的に実施することによって,概念的知識と手続的知識の意味関係に関わるミスコンセプションは,かなり打開できるものと考える。
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