本研究は、日本と台湾の児童・生徒を対象として家庭科教育に関わる比較調査を行い、日本の家庭科教育の問題点について検討することを目的とした。得られた主な知見は以下の通りである。 1、5つの各栄養素について多く含む食品名を記述させた結果、日本はビタミン以外、記述できない割合が約50%以上であり、日本の児童の栄養素と食品を結び付けた知識の定着状況の低いことが把握された。 2、問題解決的思考力をみるために設定した課題解決力に関しては、日本の児童の方が提示された問題を客観的に捉え、学習した事項をふまえながら改善策を科学的に思考する児童が多かった。台湾の児童は、全般的に問題を客観的に捉えるよりは、嗜好や観念的に改善内容を記述する児童が多くみられた。 3、情意的能力に関して栄養を考えた食事の実践については、「よく考えている」は台湾33%に対し、日本は3%と低率であり、日本の場合、学習したことが日々の生活において態度化されていないという問題点が捉えられた。と同時に、台湾の児童に比べ男女差も大きい。また、健康志向度に関して得点化した結果、日本2.09点、台湾2.42点で、日本が有意に低く、日本の児童は健康生活に対する関心が乏しいことが見いだされた。 4、衣・食・住・家族に関する家庭生活態度においては、36項目中35項目で台湾が有意に高かった。また、それらの男女差は日本で29項目、台湾で22項目みられ、いずれも男子の態度得点が低い結果となった。 5、家庭生活態度の因子分析の結果、日本は消費者としての態度が希薄であり、また生活意識においても台湾で抽出された消費者としての行動意識は抽出されず、意識の点でも低い結果が示された。 今後さらに生活に対する認識及び態度(現在、健康生活認識調査実施中)に関して検討を進めていきたい。
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