研究概要 |
本研究は、平成6年度から7年度に継続する2年計画であり、本年は最終年度にあたる。研究内容は、戦前、わが国で使用された英語教科書(特に学習開始後3年間に焦点を当てて)を収集し、教科書内容、特に使用語彙の観点から、量的、質的に考察を加え、戦後の教科書分析の結果とも併せて、今後の教科書作成にフィードバックしようとするものである。英語教科書に現れた語彙を中心に歴史的・実証的にとらえようとする。 初年度に続き、本研究はほぼ計画通りに推進された。東京都江東区の「教科書研究センター」所蔵の戦前の英語教育の背景の資料を収集する一方、戦前に使用された英語教科書のリストを作成した。分析用資料としてこれらの教科書の内容をすべて複写し、すべてコンピュータに入力することは財政的にも不可能であるから、『英語教科書名著選集』(大空社、全30巻)を購入し、その中から、その教科書使用当時、多数使用されたと思われる教科書を選択し基礎資料とした。この選集から、明治期の『National Readers』『正則文部省英語読本』『The Globe Readers』『New English Drill Books』や、大正期の『International Readers』、『Kanda's Crown Readers』、『Girls' New Taisho Readers』、昭和期の『The Standard English Readers』および『英語』の9種類の教科書をもとに予算の範囲内で商業ベースで入力データを作成した。スキャナーを利用して入力するより信頼性が高いことがわかった。 戦前の教科書と現代の教科書を比較すると、戦前のこれらの教科書の方が2倍から5倍の量の英語を与えていることがわかる。また、字列による異語数も、最近の教科書は1,500語程度であるが、戦前の教科書は2,000〜4,000語と、比較にならないほど多くの語を習得させようとしていることが明かとなった。
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