研究概要 |
1.代数の定理(9の倍数の判定法に関する定理)に対して中学生(214名,中学2、3年生)の証明の捉え方を調査した結果、(1)約60%は経験的説明を「証明」とみなし、65%が演繹的証明を「証明」とみなした。47%が経験的説明と演繹的証明の両方を「証明」と並列的に捉えていた。(2)50〜60%が前形式的証明を「証明」とみなした。(3)ほとんどの中学生は前形式的証明が形式的証明を生成したり納得させる証明と捉えなかった。(4)49%がいくつかの例による実証(帰納的推論)を分かりやすい証明であるとみなした。 2.幾何の定理(三角形の内角の和の定理)に対して中学生(155名,中学3年生)の証明の捉え方を調査した結果、(1)約85%が形式的証明を「証明」とみなし,70〜80%が経験的説明を「証明」とみなした。37%がすべての説明を「証明」とみなした。(2)60〜70%が前形式的証明を「証明」とみなした。(3)6%が操作的証明が定理を納得させる機能をもつとみなした。 中学生が各説明をどういう理由から「証明」とみなしたり,そうみなさないかの理由は実にさまざまであり、それらも総合すると、上の2つの定理のいずれに対しても,中学生の多くは証明の意味や意義を理解していないことがわかった。 3.空間を観力重視の理由を社会的,心理学的,数学教育的観点から考察し,次に,空間直観力の概念をサ-ストンの規定を中心に,実践からの考案も考慮して8個の部分能力の総称として規定した。例えば,「図形をとらえる力」,「操作を見通す力」,「図形を図で表現する力」,「位置をとらえる力」などである。それに基づいて,指導法の改善として「暗幾何」を提唱し,さらに空間直観力の育成を充実するため学習活動を提案した。
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