研究概要 |
現在までに,関係データベースの基本演算である関係データベース演算の処理の高速化を目指して,並列処理を実現する数多くのシステムが提案されてきた,一方,近年,データベースの普及に伴い,その応用分野は急速に広がってきており,それらの応用分野に柔軟に対応可能なデータベース・システムに関する研究が活発に行われている.現在までに提案された並列型データベースシステムは,唯一のデータ構造である関係(リレーション)を対象とした関係データベース演算を基本命令として実現しているので,応用固有のデータ構造および演算を対象とした新しい機能の追加を行うことが容易でなく,データベースの多様な応用分野に対応することができない.また,データ量の増大に柔軟に対処する機構を実現していない. このような背景のもとで,本研究では,データベースの応用分野の多様化,および,データベースの知識ベースへの拡張に柔軟に対応できる並列処理システムの設計および実現を行った.また,本研究では,マシン・インタフェースとして,従来のような関係データベース言語あるいは関係データベース演算ではなく,応用固有の新しいデータ構造および新しい基本演算を定義し,それらを並列処理システム内に統合することのできる汎用的なインタフェース(言語)を設計した. 本研究では,データベースの多様な応用分野に適応可能なデータベースの並列処理システムを実現するために,データベースのデータ構造および操作系を定義するための枠組みとして,関数型計算モデルを適用した.関数型計算モデルは,応用固有のデータ構造を柔軟に表現し,また,任意の操作に内在する並列性を抽出するのに適した計算モデルであることが知られている.本研究では,この計算モデルにおける並列性の抽出の容易性に着目し,データベースの定義および操作に関数型計算モデルを適用した.本研究において設計した並列処理システムの特徴は,関係モデルの基本演算である関係データベース演算のように,データベースの基本演算として広く知られている演算だけでなく,応用固有のデータベース処理のために必要となる任意のデータベース演算からなる問い合わせを対象とした並列処理を行うことができる点にある.本研究では,この並列処理システムの性能を解析するために,関数型計算モデルの枠組みのなかで,実際のデータベースおよびそれらを操作するためのデータベース演算郡を記述し,実現する並列処理システムによって問い合わせの並列処理の実験を行い,本システムの有効性を明らかにした.
|