研究概要 |
ハードウェアの高性能化とそれにともなう応用の高度化により,データベースシステムにも高度な機能が要求されるようになってきた.特に,堅固な数学的基盤に基づく演繹推論の機能を備えた演繹データベースと,柔軟な実世界のモデリング能力を備えたオブジェクト指向データベースの両者の機能を統合して,より高度な応用プログラムの開発を容易にすることが重要になってきている.このような背景から本研究では,自然言語処理,エキスパートシステムなど高度な知識処理を必要とする応用分野に着目し,それをもとに知識処理プログラミング言語の側から高度な知識処理機能と柔軟なプログラミング機能を提供することを目的とした.具体的には,知識処理機構とプログラム処理機構の高度なマッチングを可能にするために,両者のパラダイムを十分吟味したのち,応用面から見て満足のゆく解決となるような両者の統合を試みた.まず,本研究では,オブジェクト指向の継承の概念を両者の境として,知識処理側でIS-A知識に基づく継承計算を行い,プログラム処理機構側では得られた継承計算結果をプログラムモデルに反映した.このようなアプローチによって,知識処理部分とプログラム処理部分の分離が可能となり,両者を別々に取り扱いながら,応用システムにおいて両機能を統合的に使用することが可能になった.平成6年から2年間にわたる研究の結果,主に,推論機構,プログラミング手法,アプリケーションシステム開発という三つの側面から,IS-A知識を高度利用するためのデータベースプログラミング言語の基礎技術を構築することが可能になった.知的アプリケーションを構築する上で,IS-A知識の利用は今後益々重要な研究テーマになるものと考えられ,さらにモデルの見直しや改良,アプリケーション開発環境の整備,アプリケーションの開発を行なうことによって,この分野への先駆的な貢献ができたものと考えている.
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