研究概要 |
補助金が交付された期間に行った研究によって得られた成果を,本研究の2本の柱である「相互排除問題」と「安定結婚問題」に分けて示す。 1.相互排除問題 複数種類資源のための相互排除プロトコルを設計,開発した。開発した手法は,単数種類・複数個の共有資源,複数種類・単数個の共有資源に適用可能である。また,開発したプロトコルの性質を理論的に解析し,システム全体の発火並列度の上限を求めることによってプロトコルが正しく動作するためのシステムの条件を求めた。次に,求めた条件を満足するような初期有向グラフを設計するための手法を開発した。 2 安定結婚問題 男女平等安定解を定義し,その数学的性質を調べた。その結果,男女平等安定解を求める問題は,ある一つのグラフ問題(有向グラフの閉部分集合和問題)に帰着できることが分かった。また,閉部分集合和問題がNP困難な問題であることを示し,遺伝的アルゴリズムを用いて効率良く男女平等安定解を求める手法を開発した。 次に,分散安定結婚問題を定義し,それを解く分散Gale-Shapleyプロトコルを示した。また,離婚プロセスという概念を導入し,パートナーを変更するメカニズムを開発した。これにより,一度パートナーを得ても,もしそのパートナーに不満があれば,離婚プロセスを起動することにより,より良いパートナーを見つけることができる。ただし,離婚プロセスは必ずしも成功するとは限らない。そこで,離婚プロセスが成功するための条件を定理として示した。また,分散安定結婚問題の応用例として,自律分散ロボットのグループと充電ステーションのグループとのマッチングを示した。
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