研究概要 |
本研究は,データベースの存在を前提に前方後円墳の地理的な変化傾向を情報処理的に検出する手法の確立をめざしている.平成6年度中に達成した研究実績の概要を項目的にまとめるとつぎのようになる. (1)日本古墳,とくに畿内前方後円墳のデータを重点的に再調査し,データベースを補強したこと.(2)畿内の古墳について,地理上の座標位置(緯度と経度)を高精度で計測したこと.(3)定性的あるいは定量的に親縁性が定義できる古墳の集団をグル-ピングする手法を提案したこと.(4)仮定した親縁性のもとで形成される地理クラスターを畿内地域で実験的に抽出したこと. 以上の実績は,基本的には畿内(奈良,大阪,兵庫,京都,和歌山)中心の実験的研究になっている.将来的には全国規模で前方後円墳の地理的な変化傾向を分析できる環境を整えたいと考えているが,解決すべき基礎的な問題が残っている.上記(3)と(4)は,本研究の中心をなす部分であって,情報処理の理論と実践の効果的な結合が要求されるところである.別記のとおり,(3)および(4)について一定の研究成果をあげているが,現在の段階はあくまで情報処理学の範疇における成果に限られている.本研究のめざす方向は,あくまで考古学的に意味のある知見を獲得できる実践的手法の確立であって,この意味からすれば上記(3)と(4)の成果についてさらに綿密な考古学的検証を加える必要がある.この点は,今後の研究課題として残されている.
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