研究概要 |
今日、わが国の大規模小売店舗においては過去の火災事故を教訓に導入された「適」マーク制度に基づき、年に2回以上の防災訓練が義務づけられているが、制度の主眼は防災設備の整備にあり、防災訓練などの内容についてはほとんど評価されていないのが実状である。平成2年に起きた長崎屋・尼崎店火災は従来とは異なり、意外にも内部事情に通じているはずの従業員に被災者が多く出た事故となった。その後詳細に分析してみると、同店ではパート・アルバイト社員を多く雇用しており、その被災者もパート従業員であることがわかった。実際、スーパーマーケット型の大店舗ではパート社員の雇用が進んでおり、売り場での役割も正社員並に担っているが、こと防災となると訓練の参加機会が得られないなど、身分の違いが防災意識の違いにも反映されている。 その検証として大店舗従業員を対象に防災意識に関する質問紙調査(高崎市,横浜市,熊本市の合計22店舗,調査対象人員3360人)を行った結果、職種以外の諸属性においても思った程防災意識が高くないことが示された。即ち、消化器・消火栓・避難用はしご・緊急避難口等の防災設備についてその設置場所と使用方法の熟知度を問うた設問ではほぼ全体系に男性>女性,40代・30代>その他,火災体験保持者>非保持者,正社員>パート・アルバイト,10〜15年勤続者>その他,訓練経験保持者>非保持者,役割担当者>非担当者との傾向は有意であったが、それらの設備の個数をクロスさせてみると、場所については4,3設備知っている者が7割近いの比して、使用となると1割強に過ぎなくなり、中でも火気使用者についてはその他の従業員と差が見られなかったことは、逆に意識の低さが問題であると言える。本研究ではこれらの結果を基に、特に意識の低い要件を従業員自身が確認でき、意識向上を図るための指標となるチェックリストの提案を目標とするものである。
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