研究概要 |
研究代表者がこれまでに開発してきた落石運動・岩屑流などのシミュレーション手法を改良して,メラピ型火砕流の本体と対流部の運動に適用できるようにする目的で研究を行った. まず,対象地形として雲仙火山を選び,数値化された地形データを用いて,この地形上で多数の岩塊を転落させる計算を行った.用いたプログラムは,かつて御岳岩屑流に対して開発されたもので,パラメータとして岩塊の反発係数と転動に対する摩擦係数が必要である.多くの試行錯誤の結果,雲仙火山の火砕流の流下範囲を説明するためには,反発係数を小さくし,摩擦係数を調節して,実際の流下範囲に適合するようにすることがよいとわかった. 次に,メラピ型火砕流に一歩近づけて,岩塊は出発点では1個とし,流下過程で衝突が行われるときに,次第に砕けて多数の岩塊群になるというモデルで計算を行った.その際,岩塊の分割質量比は,分割された各破片の獲得する運動量の配分などが問題となるが,当面,分割質量比は1:1とし,各岩片の運動量は適当な乱数を用いて分布させ,そっらの合計が衝突後の総運動量になるような方式を用いた.これらの仮定のもとでの計算で,実際的な火砕流の分布がほぼ説明できた. さらに,噴煙部の運動については,岩塊が割れるときに,その体積に応じた量の高温ガスが噴出するとして,標準気象条件下における噴出エネルギーと噴煙の上昇高さの関係と比例し,ほぼよい一致を見た.
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