四国の太平洋沿岸は南海トラフの近傍で発生する海溝性地震により古くから100〜150年の間隔で巨大津波の被害をうけている。本研究では、四国における歴史津波の史料をもとに、慶長(1605)、宝永(1707)および安政(1854)の津波の浸水高、家屋の被害、人的被害を詳細に調べた。その結果、これら3つの歴史津波は、昭和21年の南海地震津波よりも浸水高はいずれも大きくなることを明らかにし、四国沿岸域の浸水分布図を作成した。また、家屋および人的の被害分布も示した。一方、相田の断層モデルにより、各歴史津波について数値シミュレーションを行い、四国の太平洋沿岸の津波高の実測値との比較を行った結果、ある程度の精度で計測値を再現できるが、各集落の浸水高を再現させるには計算法にまだ改良すべき余地が残された。 さらに、徳島県海部郡牟岐町の集落については、住民の協力を得て昭和21年の南海地震津波の浸水高を多点で測定(測量)し、陸上に氾濫した津波の浸水分布を求めた。また、津波体験者からの聞き取り調査を行い、家屋の流動状況、避難等の経路を調べた。この津波について数値シミュレーションを行い、陸上に氾濫する津波挙動が再現できた。合わせて防波堤、防潮堤を有する現況地形でのシミュレーションを行い、津波の制御効果を明確にするとともに、この集落に流れこむ2本の小河川からの津波の侵入を軽減すべきことを指摘した。
|