「研究の目的」 最近半導体産業界では、製作した薄膜がプラズマ中に含まれている高エネルギーの電子により破壊いされるために、高エネルギーの電子を含まないプラズマ源が要求されている。従来のプラズマ源では高密度のプラズマを得るために約1kG程度の比較的強い磁界が用いられている。この磁場がプラズマ中に高エネルギーの電子を生成する。そこで我々は高エネルギーの電子を含まないプラズマを生成するためにラインカスプ磁界と高周波を組み合わせたプラズマ源の開発を行った。 「プラズマ生成の原理」 ラインカスプ磁界が容器の周辺に沿って配置され、電界がそれと直交するように印加されると、荷電粒子、即ちイオンと電子は容器の壁に沿って同方向にドリフト運動を行う。この様な電界と磁界の構成ではマグネトロン運動とドリフト運動とが荷電粒子に複雑に作用して容器の周辺部に高密度のプラズマが生成される。このプラズマは磁界が零である中心部に磁気ミラーの様な効果によって拡散する。従って高エネルギーの電子は中性粒子との衝突によりそのエネルギーを失う。その結果プラズマから高エネルギーの電子を取り除くことができ、高エネルギーの電子を含まないプラズマの生成が可能となる。 「電子のエネルギー分布関数の測定」 電子のエネルギー分布関数を調べるために、非対称同軸ダブルプローブと電子計算機を結合した解析システムを開発した。測定の結果、容器の周辺部では高エネルギーの電子が存在しているが、容器の中心部では著しく減少していることが確認された。(文献-1)これらの結果はマグネトロン運動によって生成された高エネルギー電子は容器の周辺部でのドリフト運動による電子と中性粒子との衝突により消滅することを示している。
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