研究概要 |
本研究は固体電解質燃料電池の空気極の反応気候を定電位クロノアンペロメトリーによって解明することを目的とする。電解質として円板状のイットリア安定化ジルコニア(Y_2O_3 8%)を用いた。電解質板の両面に各々アノード、カソードを焼き付け、さらに、周辺部に参照極を焼き付けた。ポテンショスタットを用いて参照極に対してカソードを定電位ステップで陰分極すると、アノードカソード間に過渡電流が流れる。過渡電流の理論式はフィックの方程式を解くことによって得られた。このとき拡散経路として電極-電解質界面を拡散する経路と、電極バルク中を拡散する経路の2つを考えた。その各々についてフィックの式を解き、過渡電流の理論式を導いた。得られた理論式をAu/YSZ, Pt/YSZ, Ag/YSZ系空気極に適用し、それぞれの電極の速度パラメーターを決定した。その結果次のことが明らかになった。Au/YSZ, Pt/YSZ系空気極では、空気中の酸素は3相界面近傍に解離吸着し、Au-YSZ界面またはPt-YSZ界面を拡散しながら酸素イオンに還元される。したがって定常状態ではそれぞれの金属-YSZ界面の周辺部でのみ負荷電流が支えられることになる。これに対してAg/YSZ系ではAgに酸素に対するバルク拡散能があるため、酸素はAg-YSZ界面を通してでなく、Agバルク中をとおして直に界面へ供給されるため、Ag-YSZ界面全部で負荷電流が支えられる。従って前者の界面拡散型電極に比べて、後者のバルク拡散型電極は接触面の有効利用率がはるかに高く、高性能が期待できる。実際、Ag/YSZ電極系はPt/YSZやAu/YSZ電極系に比べて高性能であった。バルク拡散型電極は今後の電極開発の一つの方向を示すものとして、今後の発展が期待される。
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