核融合炉の液体金属冷却におけるMHD圧力損失の低減化のため、液体金属の模擬流体として水銀を用い、空気-水銀二相流循環実験装置を新規に製作し、内径18.2mm、外径22.2mm、長さ1030mmの銅製鉛直円管内上向き空気-水銀二相流に平行に最高6テスラの強磁場を印加し、軸方向圧力分布、MHD圧力損失、気相のボイド率分布等の流動特性および管壁の熱伝達特性を実験的に調べた。 その結果、ボイド率は4テスラまでの磁場によって影響を受けないが、5テスラになるとボイド率が約20%減少することがわかった。軸方向圧力分布には磁場印加部の入口で大きな圧力降下と出口部で圧力回復があることが確認された。磁場を5テスラまで増加させると、二相流摩擦損失増倍係数は非磁場下のおよそ2倍まで増加することがわかった。磁束密度を増加するにつれて、一般に熱伝達率は減少するが、水銀のレイノルズ数が1.41x10^5の場合には、0テスラから3テスラの範囲でヌッセルト数がほとんど変化しなかった。非磁場下においては、低水銀レイノルズ数において空気流量の増加と共に熱伝達率が顕著に増加した。さらに、6テスラまでの平行磁場に対して、空気-水銀二相流の熱伝達率は水銀単相流の熱伝達率の約2倍にまで達し、気液二相流による伝熱促進効果が確かめられた。以上の結果から、核融合炉の磁場下に液体金属二相流冷却を適用する場合の基礎的流動・伝熱現象が明らかになり、液体金属冷却が二相流冷却方式で成立し得ることが確かめられた。
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