研究概要 |
晩秋から初冬にかけて関東平野や濃尾平野では二酸化窒素(NO_2)濃度が高くなり大気環境の悪化することが知られている。冬の季節風が始まる直前、移動性高気圧の支配下で一般風も弱く、また海陸表面の温度差が昼間の海風の発達に不利な条件となっていることがこの原因の一つと考えられる。本研究では、濃尾平野-伊勢湾域におけるこのような大気汚染物質の動態を明らかにするべく、三次元輸送・反応・沈着のシミュレーションを行った。当該地域において大規模な観測が行われた1992年11月24〜25日を対象にした。本年度得られた結果は以下のようである:(1)まず、濃尾平野における排出源分布の検討を行った。炭化水素類の排出源強度について、業種別の排出原単位から基本のインベントリ-を得た後、一次元の拡散・反応モデルのシミュレーションにより、当該期間に航空機観測で得られた上空300mでの各種炭化水素濃度と計算値を比較することにより、炭化水素排出強度を修正する方法を開発した。その結果、業種別排出原単位に基づく一次推定では、toluen,xyleneなどの芳香族炭化水素の排出量が過大に評価(約9倍)されていることを見いだした。(2)以上の排出源分布および昨年までに得た三次元流れ場を用いて、24日0時から25日24時まで丸2日間のシミュレーションを実行した。シミュレーションは、NOx,HNO3,SO2,SO4=,O3,VOCs等主要な化学種をすべて含む。その結果、地表面レベルでのNO2濃度分布の日変化に実測とほぼ対応する結果が得られた。さらに、高度300および600mで得られた航空機観測の特徴、すなわち、上空での濃度は濃尾平野の風下にあたる知多半島や三河湾上でむしろもっとも高い、上空濃度は日中の午後に高くなる(濃尾平野での混合層の活発化に起因)などを良く再現していた。今後、濃尾平野における適正な排出源制御を得るために、本計算の結果の検討が残されている。
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