研究概要 |
霞ヶ浦湖心の底質コア試料(17cm長)の光合成色素分析から(1)クロロフィル及びその分解生成物は,霞ヶ浦の底質環境では分解が速く,過去の植物プランクトン量のマーカーとしては,使用できない。(2)カロチノイドはかなり安定でマーカーとして利用でき,シアノバクテリア,緑藻などの年代変化が再現出来た。(3)210Pbによる堆積速度の結果と合わせて,常陸川水門閉鎖による霞ヶ浦淡水化の前後での植物プランクトン種の変化,増減がはっきり示す事ができた。 寒帯に属し貧栄養湖であるバイカル湖の南湖盆の湖岸近い水深130mの場所の底質コア試料の植物プランクトンによる光合成色素分析を行った。南湖盆の底質は還元性で光合成色素の保存が非常に良く,約580年前までの色素分析が可能であった。緑藻,珪藻,クリプト藻、シアノバクテリアに由来するカロチノイドが検出され,クロロフィルは大部分フェオフィチンの形で保存されていた。また生物起源と考えられるペリレンが検出され,底質が無酸素状態であることを示した。 最近バイカル湖では夏期にピコシアノバクテリアが増殖しているため,ピコシアノバクテリアの光合成色素の特徴と夏期のバイカル湖のピコシアノバクテリアの分析について調査した。淡水産のピコシアノバクテリアの光合成色素は培養Synechocystis spp.とSynechococcus spp.は両方ともzeaxanthin,β-caroteneが主なカロチノイドでクロロフィルはchloraphyll aのみ、フィコビリン色素はphycoerythrinのみであり,色素に関してsynechocystis spp.とSynechococcusb spp.の差は見られなかった。バイカル湖のSynechocystisも同じ色素組成を示した。
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