研究概要 |
研究初年度は,ニューラルネットワークによって沿岸域での環境因子評価が可能であるかについて基本的検討を行った。対象事例として,琵琶湖におけるヨシ地造成ならびに宮城県沿岸域でのエゾアワビ生息場造成事業を選び各々の調査資料をもとに環境評価を試みた。種々のニューラルネットワークを構築して,各々のネットワークの正解率(認識率)を比較した。その結果,5層モデルによるネットワークの正解率が最も良くなること,学習回数を充分に与えてやれば,4層モデルにおいても正解率は高くなること等が明らかとなった。この結果から,ニューラルネットワークが環境評価に十分適用できることがわかった。 研究二年目には,さらにニューラルネットワークょ環境評価へ適用させるために感度解析を試みた。これは,構築されたネットワークの認識精度を確認した後,環境因子を変化させた時のネットワーク出力を調べるものである。この感度解析によって,特定の環境因子が急変した時の沿岸環境全体の変化を詳細に調べることが可能となった。したがって,この感度解析によって,環境要因と沿岸環境全体との定量的な因果関係を推定することができること,また沿岸域における生態系にとって好ましい環境を造成するための方法論を客観的に知ることができること等の多くの有用な点が明らかになった。 以上,二年間の研究期間における調査研究から,ニューラルネットワークの環境評価への適用性が明確になり沿岸域に限らず湖沼域あるいは河川域への展開が各方面から望まれる現状となった。しかしながら,なおニューラルネットワークによる環境評価手法の実用化に,データの曖味性の問題や過学習の問題などいくつかの課題も残されており,今後,さらに研究を継続する必要がある。
|