研究概要 |
石綿代替品の生体影響評価指標として、肺線維化関連cytokineの有用性を検討した。ヒト肺胞マクロファージのUICCamosite,crocidolite,chrysotile刺激によるcytokineの変動を探索した結果、TNF-α,IL-1β,IL-8,MIP-1α,GROが増加することが判明した。ヒト肺胞マクロファージとヒト線維芽細胞のco-cultureでは、石綿添加により肺胞マクロファージのIL-1β,GROの産生が亢進した。ヒト肺胞マクロファージで得られた結果を基に、mouse macrophage-like cell lineを用いて石綿代替品のcytokine産生への影響を検討した。試験試料は、ceramic fiber-F,ceramic fiber-FS,ceramic fiber-M,micro glass wool,K-Ti-O whisker,TiO2 whisker,SiC whiskerの7種で、標準試料としてUICC crocidoliteとtremoliteを用いた。細胞障害性試験では、いずれの試料も1-10μg/mlの濃度範囲で障害性はほとんど認めず、100-1000μg/mlでcrocidoliteに比しSiC whiskerが高い障害性を示した。MTT法では、100-1000μg/mlでcrocidoliteに比しK-Ti-O whiskerとTiO whiskerが同程度の、ceramic fiber,glass wool,SiC whiskerが高い感受性を示した。培養液中TNF-α量は、crocidoliteと比較してceramic fiberとwhiskerが増加傾向を示し、その程度はceramic fiberで大であった。細胞内IL-1β量は、crocidoliteに比しcermic fiberとglass woolが同程度かやや増加傾向を示し、whiskerでは低値であった。 以上の成績から、UICCcrocidoliteとwhiskerに比しceramic fiberでTNF-α,IL-1β産生能が亢進していることが示された。その他の肺線維化関連cytokineについては、今後測定法を確立することによってさらに最適測定項目の探索を進める予定である。また、従来用いられてきた細胞毒性試験結果とTNF-α,IL-1βの結果に相違がみられることより、in vivo実験により肺線維化とこれら試験項目との関連性について検討が必要と考えられた。他の代替品についても比較検討を加え、肺線維化においての生物学的特性を指標とした毒性試験を確立すると共にそれらの成績と鉱物繊維の形状、物理的、化学的特性との関連性についてさらに検索を続ける予定である。
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