研究概要 |
1.固定化脱窒菌の脱窒速度に及ぼす溶存酸素濃度の影響の評価 前年度において調製した酸素透過性を制御した担体に脱窒菌を固定化した場合の脱窒速度を嫌気条件下において評価した.その結果,固定化脱窒菌の脱窒速度は懸濁系における値とほぼ等しく,固定化が脱窒活性に悪影響を及ぼさないことを明らかにした.さらに,アルギン酸バリウムゲル固定化脱窒菌の脱窒速度は,バルクの溶存酸素濃度が3mg/L程度であっても,嫌気状態における脱窒速度の約90%を維持していることを確認した.また,酸素透過性が高いアルギン酸カルシウムゲル固定化脱窒菌と比較することにより,脱窒菌を酸素透過性を制御した担体に固定化することの有利性を明らかにした. 2.固定化脱窒菌の反応速度論的活性評価 固定化菌体量,ビーズ径が固定化脱窒菌の好気条件下における脱窒速度に及ぼす影響を検討し,それぞれ最適な固定化条件の範囲を明らかにした.さらに,有機物濃度,温度,pH等の影響を定量的に明らかにし,プロセス設計に必要となる反応速度論的パラメータを取得した. 3.排水処理過程における好気的脱窒速度の評価 バルクの溶存酸素濃度が固定化脱窒菌の脱窒速度に及ぼす影響を検討した.その結果,固定化菌体量ならびにビーズ径を上記で得られた最適な範囲に設定した場合,バルクの溶存酸素濃度が3mg/L程度であっても,嫌気状態の脱窒速度の約95%を維持することを明らかにした.これらの結果より,既存の好気的排水処理操作に固定化脱窒菌による脱窒操作を簡易に付与できる可能性を示した. 本年度では,酸素透過性を制御した担体に脱窒菌を固定化し,好気的な条件における脱窒速度に及ぼす酸素濃度,固定化菌体量,ビーズ径,温度などの影響を明らかにするとともに,好気的脱窒操作が可能であることを確認した.すなわち,当初の目的を達成した.
|