研究概要 |
研究目的 ダイオキシン類の発生源の解明が進んできた現在,ひとつの都市都市それを取り巻く平野部を取り上げ,そこでのダイオキシン類の分布とゆくえについて明らかにすることを目的として調査研究を始めた。 調査研究方法 ダイオキシン類の発生源が十分把握されていない現在の状況下で,調査地点をしぼることは困難である。そこで,汚染の分布を知るためには土壌(水田,畑,果樹園,都市部,底質など)を採取し,拡散要因としては大気(空気,雨,ドライフォールアウト)と水系(河川水,沿岸海水,湖沼水)を調査し,ついでダイオキシン類の蓄積濃縮する実態を知るために生物質(植物,魚介類,人体)を調査した。初年度はこれらの各試料を採取し前処置することに使いながら,本平野部の農業用地でのダイオキシン収支を計測する事とした。この結果は本平野部でのダイオキシン類の挙動を把握するうえで重要な知見を得ることができた。 調査結果のまとめ (1)松山平野のすべての試料からダイオキシン類を検出することができた(これまでの分析に供した試料)。その最も濃度の高いものは水田土壌で,その汚染源はこれまで使用されてきた有機塩素系農薬中に,不純物として含まれていたダイオキシン類であった。 (2)すべての試料に共通して検出されたダイオキシン類は燃焼系由来の異性体で,ダイオキシン類の全成分を含んでいる。また,組成もPCDD_Sでは高塩素化合物ほど濃度が高く,PCDF_Sでは4-7塩素化合物がほぼ同レベルの濃度で存在している。 (3)ダイオキシン類は大気を通じて本平野部全体に拡散されていることが,屋上大気,雨,ドライフォールアウト中のダイオキシン濃度と組成から判明した。 (4)これら汚染源と拡散要因によって山間部に存在する農業用地中の魚介類に測定可能なレベルの濃度で蓄積していることが確認された。その結果から推定すると本平野部に降下するダイオキシン類のフラックスはPCDD_Sで67-68mg/km^2/year,PCDF_Sで35-36mg/km^2/year,TEQで1.2-1.3mg/km^2/yearであった。 これまでPCDD_SとPCDF_Sはほぼ同じものとして取り扱って来たが,PCDF_Sでは2378-体以外でも生物体に蓄積することが発見され新しい課題となった。 今後残りの全試料を分析し,松山平野におけるダイオキシン類の環境挙動をまとめる予定である。
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