研究概要 |
1.貯水池,流入河川,導水路水の基本的な水質,農薬濃度および変異原性(Ames test)の季節変化特性を通年調査により解明した.河川では,溶存態の場合変異原性はほとんど陰性であったが,5月から8月にかけて陽性あるいは擬陽性となることがあった.懸濁態では+S9mixの条件で擬陽性あるいはコロニー数が増加したのち成育阻害が見られる場合が少なからずあった.導水路,貯水池のサンプルでは変異原性が認められることが河川よりも少なかった.農薬は田植え期を中心に数種類のものが検出されたが,懸濁性物質に吸着された農薬の検出頻度は低かった.また,変異原性との関連は不明確であった. 2.河川において降雨時,降雪時の調査を3回実施した.流量増加時などにおいて懸濁態のサンプルで変異原性が認めらたが,時間的な変動も大きかった.5月の溶存態サンプルでは除草剤のPretilachlorなどが検出されたが、変異原性は陰性であった. 3.森林域からの流出水の降雨時流出特性を解明した.溶存態サンプルの変異原性は一部の生育阻害を除いて陰性であった.懸濁態サンプルでは流量増加後に擬陽性となったほか生育阻害も認められた. 4.降水の通年調査を実施した.溶存態の11月から2月のサンプルで変異原性が認められることが多かったのに対し,5月から9月のサンプルでは変異原性がないか弱い傾向のときが多かった.また,代謝活性化により変異原性が弱まる傾向にあった.懸濁態では陰性が多かったが、冬季に陽性となることがあった.降水が変異原性を示すのは多環芳香族炭化水素やそのニトロ誘導体によるものと考えられ,その解明は今後の課題である. 5.実験的に検討した結果,降水の土壌カラム流出水では変異原性が弱まる傾向にあった.
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