研究概要 |
我々の見い出した不斉付加型Pummerer反応(文献1,2)を応用して、神経伝達阻害作用を有するアルカロイドであるhistorionicotoxin類の合成研究を行った。ビニルスルホキシド(2)の付加型Pummerer反応により、鍵中間体となる付加体(3)を光学収率90%e. e. で得ることができた。3の絶対配置は、絶対配置が既知の抗菌活性天然物(+)-malyngolideへ導くことにより、S配置と決定した。続いて、付加体(3)をperhydrohistorionicotoxin(1)へと導くためにシクロヘキサン環の立体選択的構築を検討した結果、パラジウム触媒を用いる分子内カルボニルアリル化反応によた、3連続不斉中心の立体制御に成功し、望みのスピロ化合物(5)を立体選択的に得ることができた。5は、側鎖の修飾とベックマン転位による環拡大などを経て高橋らのperhydrohistorionicotoxin合成中間体(6)へ導くことができ(文献3)、(+)-perhydrohistorionicotoxinの形式合成を達成した。今回確立したperhydrohistorionicotoxinの合成経路は、側鎖の構造の異なる種々のhistorionicotoxin類の合成にも応用が可能であり、構造活性相関や、新規化合物のデザインに役立つものと考えられる。 1) C. Iwata et al.,J. Chem.Soc. Chem. Commun.,1991,1408. 2) C. Iwata et al.,ibid.,1991,1409. 3) K. Takahashi et al.,Helv. Chim. Acta,1982,65,252.
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