研究概要 |
Waniらによる,1971年のジテルペン性抗癌剤taxolの発見は,天然からの抗癌剤探索の分野で最も重要な発見のひとつであり,卵巣癌,肺癌,乳癌患者に大きな期待を抱かせるものであった.一方,全世界の科学者もtaxolに多大な関心を示した.しかしながら,taxolを医薬品として利用する研究は,抽出材料の不足,taxol含量の低さ,分離法の複雑さ等の理由により長い年月を要した.これらの問題点を解決する目的で多くの科学者がtaxolと同等の生物活性を持つ化合物又はtaxolの半合成原料の探索研究を開始した.また,我々もそのような観点より本研究を行なった.我々は,今までにその成分が研究されていないTaxus yunnanensis地下部の部分に焦点をあて研究を行ない31種の化合物を単離した.そのうち15種,taxuyunnanine A,10-deacetyl taxuyunnanine A,7-epi-taxuyunnanine A,7-epi-10-deacetyl taxuyunanine A,10-deacetyl-10-oxo-7-epi-taxuyunnanine A,taxuyunnines B-Jおよびリグナン系化合物は新化合物であり,その構造を主としてスペクトルデータの解析により明らかにした.残りの16種はtaxol等の既知化合物であった.これらの新化合物のうち,taxuyunnanine Aはtaxolよりは弱いながらもKB cellに対してtaxolと同程度の細胞毒性を示した.他の新化合物のうちtaxuyunnanine Aと同様のC-13側鎖を持ち,taxane骨格上の官能基の異なる10-deacetyl体,7-epi体,7-ep-10-deacetyl体,10-deacetyl-10-oxo-7-epi体は,taxuyunnanine Aの活性に比較し弱いものの(50%阻止濃度 0.02mcg/ml以下),(財)癌研究会の判定基準(50%阻止濃度=4mcg/ml以下で有効と判定する)より有効であった.また,その他の新化合物は0.3mcg/mlまでの濃度ではKB cellに対する細胞毒性は示さなかった.
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