研究概要 |
レクチン活性の検出とその結合特異性を解析する手段として,構造既知の糖鎖物質を固定化したミクロビーズを作製し、凝集反応に用いることを試みた。この際,相手となるレクチンもビーズ上に固定化して操作の便宜と反応系の統一を図ることとした。 担体ビーズとして直径2.5μmのホーネンスフィアを用い,表面上のアミノ基をスクシニル化した後にカルボジイミドで活性エステルとした。NHSを架橋剤として糖ペプチドとレクチンのアミノ基を結合させて「担糖ビーズ」と「レクチンビーズ」をそれぞれ作製した。糖鎖物質としては,構造解析されているブタ顎下腺と胃粘膜ムチン,ヒト及び羊IgG,トランスフェリン,フェツイン,トリプシンインヒビターの糖ペプチド,及びH,ルイス抗原糖鎖結合のBSAを用い,また,12種の既知レクチンと2種の新規レクチンを結合させた。 担糖ビーズとレクチンビーズとの凝集反応は,予想された糖鎖構造-レクチンの関係を正しく反映したものであり,手段と方法の有用性が明らかとなった。さらに,糖鎖をグリコシダーゼで逐次消化するとレクチンビーズとの反応性が対応して変化するので,新規レクチンの結合特性を解析する方法としても有効であった。各種の担子菌と子嚢菌子実体に存在する新規レクチンの結合特異性を解析したところ,2種について厳密なT抗原構造を認識することが分かった。これらはピーナッツレクチンと較べてより応用価値が高いと判断された。 (設定した研究期間で解決できなかった問題点は継続研究の結果,架橋法の改良によってビーズへの結合量が改善され,また,レクチンビーズを用いて細胞表面の糖鎖構造の検出が容易にできることを示した。)
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