研究概要 |
神経細胞における糖脂質の特異的発現を検索するために、ラット小脳(生下時)由来の初代培養細胞を我々が開発した一連の抗糖脂質特異モノクローナル抗体を用いて解析した。ニューロンでは顆粒細胞が抗GD1b抗体と強く、抗GD3抗体と弱く反応したが、その他の抗体とはまったく反応しなかった。この抗GD1b抗体の反応性はシアリダーゼ処理により消失した。しかし、シアリダーゼ処理細胞は、抗GM1抗体と強く反応した。顆粒細胞はコレラ毒素(GM1結合蛋白質)やテタヌス毒素(GT1b結合蛋白質)とも強く反応した。上記結果は顆粒細胞に発現される主要なガングリオシドはGD1bであることを示唆した。従来、ニューロン特異ガングリオシドとしてコレラ毒素やポリクローナル抗体を用いた研究によりGM1が報告されてきたが、我々の結果はまったく異なる。ある種の小型神経細胞は抗GD2抗体と強く反応したが、コレラ毒素やテタヌス毒素とも強く反応した。この神経細胞は未同定であり今後の検討を要する。プルキンエ細胞は抗O-Ac-ジシアロガングリオシド抗体と強く反応したが、その他の抗体とはまったく反応しなかった。この細胞をアンモニア蒸気で処理すると反応性が消失すること、およびシアリダーゼ消化後の糖鎖の骨格がnLc4Cerであること等より、このガングリオシドはO-Ac-DL1と結論された。グリアではアストロサイトにGM4,GD3,Gb4Cer,Gb5Cerが、オリゴデンドロサイトにGalCer,SM4sが特異的に発現されていることが判明した。さらに、これら細胞は、各々、抗GFAP抗体と抗MBP抗体と特異的に反応することを免疫二重染色法にて確認した。GalCerはオリゴデンドロサイトのマーカーとして広く利用されているので、上記結果は、各糖脂質は神経細胞の有用な分化マーカーになる可能性を示す。
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