研究概要 |
P4501A1遺伝子の転写に必要な三つの転写因子Ahリセプター、Arnt、Splをバキュロウイルスの発現系を使って調製した。得られた粗抽出物をさらにニッケルアルフィニティークロマトグラフィーでさらに精製した。この操作で5x10^8の細胞から20μgのAhリセプター、80μgのArnt、80μgのSp1をそれぞれ純度20%,80%,80%で得ることができた。またSp1についてはHeLa細胞核抽出液からも分離精製した。これらの因子とその特異性抗体を使ってSp1とAhリセプター、Sp1とArntが結合することを見いだした。さらに、これらの精製因子と、AhリセプターとArntのヘテロダイマーが認識するXREを4個、Sp1が認識するGCボックスを1個プロモーターにもつGフリーカセットをテンプレートに使ってインビトロ転写実験を行った。基本転写因子群はRNAポリメラーゼを含むHeLa細胞の核抽出液で、すでにわかっているSp1の転写効果をまず検討したところ、バキュロウイルス発現系で調製したSp1よりもHeLa細胞由来のSp1の方が転写活性が強かった。バキュロウイルス発現系のSp1はコンフォメーションが十分でない可能性がある。つぎにAhリセプター、Arntの添加効果を調べたところSp1のみに比較して約2倍の転写活性化を観察した。Ahリセプター、Arntだけでは転写活性化はおきなかった。これらの結果は動物実験や培養細胞でのP4501A1遺伝子のAhリセプターとArntを介した転写活性化(約30倍)には及ばないものの3個の転写因子の寄与を確認したことになり、一定の成果を得ることができた。
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