研究概要 |
私達は先にラットの胸腺細胞と成熟T細胞の主要ガングリオシドがGDlc(NeuGc,NeuGc)という分子であることを明らかにした。また胸腺細胞の活性化によってGDlc(NeuGc,NeuGc)量が大きく増加し、さらに活性化前には検出されなかったGDlb(NeuGc,NeuGc)というガングリオシドが新たに主要成分として出現してくることを明らかにした。この活性化T細胞特異的ガングリオシドの機能を明らかにする目的で本研究を行った。 まずGDlb(NeuGc,NeuGc)に対するモノクロナール抗体の作製を行った。得られた抗体ABlはGD1b(NeuGc,NeuGc)と強く反応し、GDlb(NeuAc,NeuAc)にも反応したが、その他に検討したGDlc(NeuGc,NeuGc)をはじめとするガングリオシドとは全く反応しなかった。またGDlc(NeuGc,NeuGc)についてもモノクローナル抗体を作製した。得られた抗体AClはGDlc(NeuGc,NeuGc)と強く反応する他、GDlb(NeuGc,NeuGc)ともある程度反応し、GD3(NeuAc,NeuAc)とごくわずかに反応したが、他のガングリオシドとは全く反応しなかった。ABl、AClのアイソタイプはともにIgG3(k)であった。 これらの抗体を用いてラットの胸腺細胞および脾臓T細胞の活性化についてflow cytometry解析を行った。活性化前の胸腺細胞およびT細胞では主としてCD4^+細胞の一部にACl^+細胞が存在し、ABl^+細胞は認められなかった。これらの細胞のTPAおよびカルシウムイオノフォアA23187で刺激して活性化させるとACl^+細胞の比率が大きく増加するのに対して、ABl^+細胞は胸腺細胞の活性化においてのみ出現することが明らかとなった。以上の結果から、GDlc(NeuGc,NeuGc)はラット胸腺細胞および成熟T細胞の活性化に関与するのに対して、GDlb(NeuGc,NeuGc)は胸腺細胞の活性化に特異的な分子であることが示唆された。
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