研究課題/領域番号 |
06680644
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
生物物理学
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
津田 穰 (1995) 千葉大学, 薬学部, 教授 (90009506)
笈川 節子 (1994) 千葉大学, 薬学部, 助教授 (60101359)
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研究分担者 |
畑 晶之 千葉大学, 薬学部, 助手 (50241972)
笈川 節子 千葉大学, 薬学部, 助教授 (60101359)
津田 穣 千葉大学, 薬学部, 教授 (90009506)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1995年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
1994年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
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キーワード | アセチルコリン / コリンエステラーゼ / セリンプロテアーゼ / 加水分解 / プロトンリレー機構 / 分子軌道法計算 / 分子動力学 / 活性三残基 / 分子動力学計算 / 量子化学計算 / 局所密度汎関数法 / アニオニックサイト / 抗痴呆薬 / 加水分解反応機構 / セリンオキソニウムイオン / 活性中心 |
研究概要 |
アセチルコリンエステラーゼはコリン作動性シナプスで神経化学伝達物質アセチルコリンを加水分解する酵素であり、その阻害薬はアセチルコリンの蓄積をもたらすので、強い副交感神経興奮作用を発現する。最近では、特に大脳皮質におけるアセチルコリン不足から起こるアルツハイマー病症状を改善する治療薬(抗痴呆薬)として注目されている。本研究では、アセチルコリンエステラーゼの特異的な酵素反応機構を原子レベルで明らかにすることにより、本酵素をターゲットとした医薬開発のための基礎研究を行うことを目的とした。当初計画に従い、(1)アセチルコリンエステラーゼのコリン結合部位-分子動力学による検討、(2)アセチルコリンエステラーゼ活性部位でのエステル加水分解反応機構-量子化学および分子動力学による解明、をアセチルコリンエステラーゼのX線結晶解析構造を基に行った。その結果、(1)アセチルコリンの四級アンモニウム正イオンを受け止める酵素側の結合部位(アニオニック・サイト)として、Glu 199が負電荷を持ち且つアセチルコリンを加水分解する上で適切な位置に保持できる唯一のアミノ酸残基であることがわかった。これにより酵素への取り込みが容易となるので、分解反応速度が極めて速い理由が説明できる。(2)活性部位のSer 200-His 400-Glu 327とアセチルコリン、(1)に示したGlu 199、及び中間生成物である四面中間体を安定化するオキシアニオンホールとなる2つのGlyを考慮して、加水分解反応モデルを組み立て、これについて半経験的および非経験的分子軌道法を用いて量子化学計算を行うと共に分子動力学計算を行った。その結果、反応機構にはプロトンリレー機構が働くこと、これにより活性中心のセリンオキソニウムイオンを生成する律速反応が二段階に分割され、反応に必要な活性化エネルギー値が10kcal/molも下がることがわかった。これは構造的に類似したセリンプロテアーゼの反応機構で問題になっていたプロトンリレー機構の意義を積極的に肯定し支持するものである。以上の研究を総括し、本酵素をターゲットとした酵素作用阻害薬の分子設計の指針を提出した。実際の試みは今後の課題としたい。
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