研究課題/領域番号 |
06680685
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
細胞生物学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
荻原 哲 大阪大学, 理学部, 助教授 (30169221)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
2,300千円 (直接経費: 2,300千円)
1995年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
1994年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
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キーワード | 細胞膜 / エクソサイトーシス / 細胞外基質 / アクチン / 仮足 / エクソサイドシス |
研究概要 |
細胞では移動運動に伴って細胞膜のダイナミックな変動が起こる。先端部では細胞膜が拡大し、それ以外の後端部では縮小する。先端部での細胞膜拡大は細胞膜の前駆体の開口放出によるものであると考えられているが、前駆体の構造的実態はこれまで示されていない。私は粘菌変形体に含まれる直径約5ミクロンの小胞(Slime vesicleスライム小胞以下SV)の開口放出と細胞膜拡大の共役について詳細な検討を加え、その結果以下に述べるようにSVが拡大する細胞膜の前駆体で有る可能が示された。 本研究の準備段階で私は細胞膜の前駆体が蛍光脂質ロ-ダミンフォスファチジルエタノールアミン(Rh-PE)と結合することを見いだしていた。抗Rh抗体を用いて電子顕微鏡レベルでRh-PEによって染色される構造を同定した。さらに前駆体が細胞膜と融合することを確認した。前駆体内部にはスライムと呼ばれる粘液質の細胞外基質が含まれていた。次年度では個々のSVの開口放出が仮足の微小な突出領域のそれぞれと対応していることを確認した。移動運動するアメーバの仮足の先端部には多くの種類の小胞構造が存在するが、SVのみが透明層に入り込む。そこでSVは細胞の縁に向かって移動し、消失する。消失に続いて突出が起こる。突出部は光学顕微鏡と電子顕微鏡によってアクチン繊維を含むことが分かった。精製したECMに対して作製した抗ECM抗体はSVを染色した。細胞外に分泌されたECMも抗体によって認識された。高倍率での観察ではSVが細胞膜近傍で高密度に存在し、電子顕微鏡の観察とよく一致した。SVの数は細胞をGTP-gSで処理する事により半減した。同時に細胞表面積の増加速度も約50%減少した。SVの形態に変化が見られた。GTP-gS処理によりSV表面から中空の膜が管状に突き出し、管の端にはclathrin coatが多数見られた。 以上の結果から仮足の突出がSVの開口放出によって量子的に起こり、そういった微小の突出の総和が細胞膜の拡大のすべてである可能性が示唆される。すなわちアメーバ細胞が移動運動するとき、仮足部でのアクチンの重合による仮足の突出に必要な細胞膜成分はすべてSVによって供給される可能性である。内容物が細胞外マトリックスであるSVの開口放出と仮足伸長が共役していることは合目的である。微細構造的に同定した細胞膜の前駆体は、光学顕微鏡でも観察可能なほど大きいため生きた細胞での膜融合や細胞膜拡大のダイナミックスの解析に適しており、系として将来性があると思われる。内容物が細胞外基質であったことも興味深い。以上の内容を日本細胞生物学会第47(長崎)、48回(仙台)大会運動班班会議(大阪)等で報告した。
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