研究概要 |
DNA損傷を受けた細胞ではDNA修復のための一時的な細胞周期停止が起きる。一方、速やかなポリ(ADP-リボース)の合成と分解が認められる。そこで本研究においては、DNA損傷後の細胞周期停止のメカニズムをポリ(ADP-リボース)代謝という側面から調べた。まずDNA損傷後のG1期停止過程におけるポリ(ADP-リボース)代謝を調べるためにガンマ線照射後のG1期停止異常を示す細胞株を検索した。DNA損傷を起こす薬剤によるtransformation高感受性で知られるBALB/C3T3 A31-1-1株では親株A31とは異なり、ガンマ線照射後のG1期停止が欠如していた。G2期停止は親株と同様に観察された。A31-1-1株ではガンマ線照射後のp53蛋白質安定化及びp21発現の誘導は観察された。一方、mdm-2、cdk4、及びIrf-1 mRNAが各々、親株の各々90,16,9倍に恒常的にoverexpressionしていた。以上のことから、p53蛋白質とp21のDNA損傷応答が正常であっても、他の細胞周期制御因子の発現異常がG1期でのチェックポイント・コントロールの消失につながることがわかった。
|