基底膜の主な構成成分であるラミニンに存在するIIe-Lys-Val-Ala-Val(IKVAV)配列は細胞接着活性の他に細胞伸展活性、細胞増殖活性、コラゲナーゼIV合成の増加作用を持つことが報告されている。そのIKVAV配列を遺伝子工学を用いて、バクテリアの免疫グロブリンG(IgG)結合蛋白質であるプロテインA分子上に移植した組み換え蛋白質を3種類作成した。プロテインA分子のN末端にIKVAV配列を持つもの、3番目のIgG結合領域中に持つもの、そして、C末端部分に持つものである。それぞれのをプラスチックプレート上にコートし、線維芽肉腫(HT1080)細胞、横紋筋肉腫(RD)細胞、メラノーマ(B16F10)細胞、クロム親和性(PC12)細胞が接着するか、接着後伸展するか、また、PC12細胞では接着後神経突起の伸展が見られるかどうかを調べた。HT1080細胞、RD細胞、B16F10細胞は共に、3種類のIKVAV配列移植プロテインAには接着できなかった。一方、コントロールのGRGDSP配列移植プロテインA(インテグリンαvβ3で認識される)やEILDVPST配列移植プロテインA(インテグリンα4β1で認識される)には接着し、伸展した。また、PC12細胞は、シグナルを移植したプロテインAにもシグナルを移植しいないプロテインAにも接着したため、移植シグナルを介しているかどうかは判断できなかった。 今後、機能シグナルを移植する蛋白質をPC12細胞の接着しない蛋白質に変えて、同様の実験をする予定である。
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