研究概要 |
本研究では自己免疫疾患の1つであるGuillain Barre Syndrome(GBS)の発症機序を解明する目的で以下の実験を行った。GBS患者から分離されたC.jejuni(Penner type 19)のリポ多糖を分離精製し、神経成分とのリポ多糖との分子相同性を証明する。またGBSの亜型であり抗GQ1bガングリオシド抗体が検出されるFisher's syndrome患者から分離したC.jejuni(Penner type 2)のリポ多糖を分析しGQ1b構造が存在することを調べ、病原体と神経の分子相同性による末梢神経疾患の発症機構を分子レベルで解明する。 GBS患者には神経成分であるGM1ガングリオシドに対する抗体が上昇している。そのGBS患者から分離された先行感染菌C.jejuni(Penner type 19)のリポ多糖中にGM1ガングリオシドと同じ糖鎖が存在することをガスクロマト/質量分析、プロトンNMR,によって分析し,その構造(Galβ1-3GalNAcβ1-4(NeuAcα2-3)Galβ-)を化学的に明らかにした。またFisher's Syndrome患者の血清中に上昇している抗GQ1bガングリオシド抗体の抗原となる糖鎖構造が患者から検出されたC.jejuni(Penner type 2)のリポ多糖に存在すること免疫学的手法によって確認した。 これらの成果から、病原体の感染によって産生された抗ガングリオシド抗体が神経筋接合部に作用して障害考えられる。その発症機序は、病原体成分(リポ多糖)と神経成分(ガングリオシド)との分子相同性に基づくことを分子レベルで明らかにした。
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