研究概要 |
NMDA受容体チャネルは、シナプス可塑性、発生におけるシナプス形成、神経疾患に観察される神経細胞死などに重要な役割を担っていると考えられている。本研究では、NMDA受容体チャネルの作動調節機構を解析し、脳内におけるNMDA受容体チャネルの基本的性質を推定する事を目的とした。特に、脳内に豊富に存在し、NMDA受容体チャネルの作動を制御していると考えられている2価カチオンに対する感受性、および蛋白質燐酸化酵素によるNMDA受容体チャネルの活性修飾に焦点をあて機能解析を行った。 マウスNMDA受容体チャネルサブユニットを用い発現させた4種類のヘテロメリックNMDA受容体チャネル(ε1/ζ1,ε2/ζ1,ε3/ζ1,ε4/ζ1)の機能的性質を電気生理学的に解析した。まず、2価カチオンに対する感受性差を解析し、Mg^<2+>に対しε1/ζ1,ε2/ζ1チャネルは感受性が高く、ε3/ζ1,ε4/ζ1チャネルは感受性が低いことを明らかにした。またCa^<2+>やZn^<2+>に対する感受性も、ヘテロメリックチャネル間で異なる結果を得た。これらの結果から、2価カチオンによるNMDA受容体チャネルの作動制御が、脳内においてもεサブユニットの多様性により異なる可能性が示唆された。さらにε2/ζ1チャネルについてはシングルチャネルレベルでイオン透過性を解析した。また、我々はC-キナーゼを活性化するTPA処理によるNMDA受容体チャネルの活性増強には、ε2サブユニットのC末端部分が重要であることをキメラサブユニットを用いた解析により見い出していたが、さらに欠失変異体による解析により確認した。さらに、以上の研究の他に、脳形成の分子機構を解析するため、ゼブラフィッシュを用い、脳の形態形成に関与する事が示唆されているotxホメオ蛋白質のcDNAクローニングを行い、構造を解析すると共にmRNAの発現解析を行った。
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