研究概要 |
カルシニューリンは中枢神経系に豊富に存在する蛋白質脱燐酸化酵素で、その活性はカルシウム/カルモジュリンによって調節されている。カルシニューリンは触媒サブユニットと制御サブユニットからなる2量体構造を持つ。研究代表者らは遺伝子クローニングの手法により、カルシニューリン触媒サブユニットの全一次構造を明らかにし、さらにカルシニューリンの触媒及び制御サブユニットには、それぞれ少なくとも2種類の異なる遺伝子によってコードされるサブタイプが存在することを明らかにした。また、2種類の触媒サブユニットサブタイプのmRNAおよび発現蛋白質がラット脳内で異なる分布を示すことも明らかにしてきた。本年度において、新しい制御サブユニット(カルシニューリンBα2)を発見し、予測される全アミノ酸配列、そのラットにおける組織分布、発生時における発現の変化などを明らかにした(Chang-Duk Chang et al.,1994)。また、触媒サブユニットの各種サブタイプ特異抗体を用いた免疫化学的方法により、ウシ脳に発現する触媒サブユニットタイプの固定を行い、AαおよびAβサブタイプ以外の新しいサブタイプの存在する可能性を示唆した(Yokoyama et al.,1994)。さらに、免疫抑制薬FK506の代謝産物とFKBP/カルシニューリン複合体の形成についても、新しい測定法を開発して、解析を行い、複合体形成反応が、多段階ではなく、一段階の反応である事を明らかにした(Tamura et al.,1994)。
|