研究概要 |
虚血時細胞外に流出する高濃度グルタミン酸とそれに呼応して濃度上昇する細胞内カルシウムイオンは虚血性遅発神経細胞死の発生過程において重要な役割を担う2大因子として広く支持されている.しかしながら,これら2つの因子が発現するのは虚血時に限られ,数日後発生する虚血性遅発神経細胞死との間を結ぶ因子が不明であった.近年,ある種のグルタミン酸受容体拮抗薬(例えば,NBQXなど)が虚血後投与であっても虚血性遅発神経細胞死をブロックすることが報告され,グルタミン酸受容体が虚血性遅発神経細胞死発生の要因として働いていることが示唆された.本研究では,一過性脳虚血後に一時的に機能回復をした神経細胞のグルタミン酸受容体において如何なる機能変化が起こっているかについて,スナネズミの海馬CA1野におけるマイクロフルオロメトリー法及びwhole-cell voltage-clamp法を用いて検討した.その結果,マイクロフルオロメトリー法を用いたカルシウムイオンイメージング実験においては,虚血後,特に3-9時間後の時点でNMDA型グルタミン酸受容体を介したカルシウムイオンの細胞内流入増加現象が観察され,またwhole-cell voltage-clamp法を用いたNMDA誘発性イオン電流応答の観察においても,ほぼ同じ時間経過でNMDA型グルタミン酸受容体の増強反応が生じていることが確認された.このグルタミン酸受容体の機能変化が虚血性遅発神経細胞死発生の直接的要因として働いているのではないかと考えられる.
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