研究概要 |
神経細胞接着因子L1は(1)細胞接着活性(2)神経突起伸長作用(3)神経線維束化形成(4)神経細胞移動(5)細胞内情報伝達機構(6)ミエリン形成などに関与する多機能型のイムノグロブリンスーパーファミリーに属する接着蛋白である。この遺伝子の異常により水頭症,精神発達障害を伴うMASA症候群・痙性片麻痺の原因となる。L1は分子量が200KDの膜貫通型の糖蛋白であるが,脳内ではプロティオリテックな分解を受けて80KD分子(L1-80)と140KD分子(L1-140)となるが,L-80はIgドメインをもたずフィブロネクテンタイプIII型ドメインが細胞外に突出した形をとっている。それぞれのドメイン毎の機能はこれまでに明らかでなかったが,本研究を通してL-80が持つ機能解析を試みたところ,これまでに報告されていない脱神経線維束化促進作用を持つ活性がL-80のフィブロネクテンタイプIII型の第3番目と第4番目にあることが判明した.このことは神経発生過程の初期にはL-200の完全型が神経突起伸長や神経線維束化促進作用として働き,その後脳の形態形成に伴ってL-80が今度は脱線維束化作用として多面的に働くことで高次機能を備えた脳の形態形成が完成されることを意味することで非常に意義深い. また,L1が持ついづれかの機能障で引き起こされるような脳の形態形成不全や機能未発現を解明するために,機能ドメインが直接解明出来るような各ドメイン毎の抗体を作成して調べたところさらにL-80のフィブロネクテンタイプIII型ドメインの第41第5部位には神経回路網形成に重要な役割を果たす細胞間認識に直接関与するドメインも存在することが明らかとなった。
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