研究概要 |
パーキンソン病(PD)では電子伝達系複合体I(Complex I)の活性低下があり,その原因として複合体蛋白をコードしているミトコンドリアDNA(mtDNA)と核遺伝子に変異がある可能性がある.我々は,mtDNAの遺伝子多型に注目し,PD10例,PD以外の疾患対照30例のmtDNAの全塩基配列を決定した.これらの結果をもとに塩基番号(np)4343,12358,11255,14180の4ヶ所の点変異につき,PD121例,正常対照139例,PD以外の変性疾患対照48例の末梢血リンパ球よりDNAを抽出,ミスマッチプライマーを用い,PCRにてmtDNAを増幅後,制限酵素消化の有無により点変異の出現頻度を確認した.np4343,12358の点変異は,いずれの群において出現頻度に有意な差はなく,日本人に多い多型の一つと考えられた.一方,np11255,14180はフリーラジカルの攻撃を受けやすいヒスチジン(His),システイン(Cys)へのアミノ酸置換を伴った点変異であり,np11255ではPD1例,疾患対照2例に,np14180ではPD2例のみに点変異が存在した.His,Cysへのアミノ酸置換は構成蛋白のフリーラジカルに対する感受性を高め,Complex Iの活性低下を引き起こす可能性がある.今後臨床症状との関連を含めて検討していく予定である. 一方核でコードされる複合体Iのサブユニットに関しては,ウエスタンブロットで減少していた24-kDaサブユニットの正常遺伝子構造を明らかにすべく24-kDaサブユニットのcDNAをプローブとしヒト胎盤ゲノミックライブラリーより100万クローンをスクリーニングし,得られた30クローンを分析し,24-kDaサブユニット核遺伝子は凡そ全長50〜60kbの8エクソンよりなる遺伝子であることが判明した.またin situ hybridizationでchromosome18の短腕に存在することを明らかにした.今後全てのエクソンを明らかにし患者群で変異が存在するか否か検討する予定である.
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