研究概要 |
視交叉上核(SCN)における種々の神経伝達物質放出のサーカディアンリズムおよび光や薬物に対する反応性をin vivoとin vitroの両実験系を用いて解析することを目的とした。 in vivo実験では、12時間明12時間暗の条件下で繁殖飼育したWistar系成熟雄ラットを用いて、連続3日間のマイクロダイアリシスを行い、明暗サイクル下での興奮性アミノ酸の放出にサーカディアンリズムがあるかどうか、連続暗および連続明でリズムが存続するかどうかを確かめた。連続暗の第2日目に短時間の光照射を行い、光刺激による興奮性アミノ酸放出の変動、その位相依存性等を確かめた。その結果アスパラギン酸とグルタミン酸の両興奮性アミノ酸は、明暗サイクル下では相関がみられ暗期に上昇し、明期に減少するリズムを示した。連続暗および連続明1日目ではそのリズムは減少した。光パルスは有意の変動を示さなかった。ウレタン麻酔ラットでも両興奮性アミノ酸は、暗期に上昇するリズムが認められた。以上よりSCN近傍細胞外液中のアスパラギン酸とグルタミン酸リズムは、光の入力よりも生物時計の出力を反映していて、外界の明暗に修飾されて昼夜変動が増大すると考えられた。 in vitro実験では、Wistar系ラットの生後1週間目の仔ラット視床下部から、厚さ375μmの前額断切片を作りSCNを切り出し、14日間回転培養を行った後実験に供した。連続6日間、2時間ごとの培養液の回収を行った。Arginin Vasopressin (AVP), Vasoactive Intestinal Peptide (VIP)とも約20時間のきれいなサーカディアンリズムがみられ、両ペプチドの位相差は2時間以内であった。この系に3日目にNMDAを投与すると、AVP, VIPの位相差は大きく変化し、最大ではAVP, VIPの位相がほぼ逆転した。このことから、AVP, VIPの放出にはそれぞれ異なる振動体によって、調節されていると考えられる。また、Ca^<2+>を含まない培地で培養したSCNでもアスパラギン酸、グルタミン酸、グリシンは顕著なサーカディアンリズムを示し、その頂点位相は一致しAVPの頂点位相とも一致した。このことから、概日時計は、その振動機構に細胞外Ca^<2+>を必要としないことが示唆された。
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