研究概要 |
1)サル中隔核における空間および物体の認知・記録の神経機構 呈示物体の報酬随伴性が、i)サルの居場所に依存する条件性Go/Nogo課題,およびii)居場所に依存しない非条件性Go/Nogo課題を用いてサル中隔核ニューロンの応答性を解析した。その結果,i)サル中隔核ニューロンの13.5%は場所に関して識別的に応答した。これら場所識別応答は,a)主として外界の視覚情報に起用していること,b)同一の環境刺激群が複数の場所から見えることや特定の環境刺激を変化させるブローブ課題の結果などから,ある特定の視覚手掛かりてではなく,場合の認知を反映していることが示唆された。ii)中隔核ニューロンの約13%は条件性課題だけに識別的に応答した。iii)中隔核ニューロンの約7%は,条件性および非条件性課題に関わらず,報酬あるいは無報酬物体に選択的に応答した。これら報酬および無報酬関連応答は,消去学習により物体の報酬随伴性を直接変化させると、物体の意味に応じた可塑的に変化した。以上より,中隔核は場所の認知→居場所の違いによって変化する物体の意味の識別という一連の過程を統合する上で重要な役割を果たしていることが示唆される。 2)サル中隔核における動機づけ行動の神経機構 ジュースや種々の食物を報酬とする物体識別課題遂行中のサル(12時間絶水・絶食)から記録した349個の中隔核ニューロンのうち,67個が摂取期に応答した。さらに,これら67個の摂取期応答ニューロンのうちの31個に対し,サルに繰り返し課題をテストすることにより,報酬の摂取量およびサルの動因状態の変化と中隔核ニューロンの自発放電頻度および報酬摂取に対する応答性を比較した。その結果,i)ジュース報酬に抑制的に応答したニューロン(Type I,n=10)の自発放電頻度が,ジュース報酬の摂取により次第に低下した,ii)ジュース報酬に興奮性に応答したニューロン(Type II,n=21)の自発放電頻度は,ジュース報酬の摂取により変化しなかったが,ジュース摂取期の応答が次第に低下した,iii)これらニューロン応答の変化とサルの動因状態には非常に高い正の相関がある,iv)これらのニューロンは中隔核の吻側部に多く分布していることなどが明らかになった。以上より,中隔核は,動因/動機付け機構に対して抑制的に機能していることが示唆される。
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