研究概要 |
本研究の目的は、スライス標本において、非錐体細胞(source cell)及び錐体細胞(target cell)から同時記録を行い、抑制性介在細胞群の電気生理学的及び形態学的特徴を明らかにすることであった。しかしながら、スライス標本では、、シナプス結合を持つペア-の細胞から同時記録が得られる確率は、スライス培養標本に比べて低いことが判明した。従って、現在ではスライス培養標本を用いた実験が進行中である。一方、抑制性介在細胞群を含む非錐体細胞からの細胞内記録及び細胞内染色により得た結果を以下に概要する。 (1)ネコ大脳皮質運動野第VI層より23個の非錐体細胞から細胞内記録が得られ、fast spiking(FS)type(n=8),regular spiking(RS)type(n=14),burst firing type(n=1)のサブタイプに分類された。RSタイプはさらに、脱分極性スパイク後電位(DAP)を持つもの(n=5)と、持たないもの(n=9)に分類された。 (2)8個のFSタイプの非錐体細胞のうち4個は典型的なFS細胞であったが、他のFS様細胞は、FS細胞に比べて長いスパイク幅と短いAHPの時間幅を示し、形態学的にも、dendritic spineが豊富で、変形した錐体細胞様の細胞体と樹状突起を示し、白質に進入する軸索も認められた。 (3)9個のDAP(-)-RS細胞のうち、4個の細胞において、皮質第V-VI層或いは白質の刺激により、3-6発のバースト発火とそれに続く持続時間の長い(150-350msec)脱分極性スパイク後電位が誘発された。このような発火パターン及びそれに続く特徴的な電位は脊髄Renshaw細胞のそれに非常に類似していた。また、これらの細胞は、dendritic spineが疎で多極型の細胞体と樹状突起を示し、その軸索は白質へ進入せず、水平方向に広がったバスケット様のネットワークを形成していた。 (4)5個のDAP(+)-RS細胞のうち、2個の細胞において、強い脱分極通電により、regular spikingパターンがバースト発火のパターンに変化することが認められた。このような変化は、2-3分後に消失したが、一連の経過を何度も繰り返すことが可能であった。このような細胞は、第III層及び白質に達する、垂直方向に変位した樹状突起のドメインを持ち、dendritic spineも中程度に認められた。
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