研究概要 |
マウス肺を6等分しそれぞれを平底96ウエルマイクロプレートのウエルに入れ,センダイウイルス定量の際に用いる培地199を0.1ml加え,センダイウイルスMN株(10^4TCID_<50>/25μl)を10μl接種し,培養液中のウイルス価を経時的に調べたが,その成績は実験毎にばらつき,明瞭な増殖曲線を得ることはできなかった.次にあらかじめ経鼻接種したマウスから採取した肺,あるいは気管カテーテルを用いてウイルスを注入した肺を199培地で培養したが,ウイルスの増殖を明瞭に認めることはできなかった.そこで,培養液をダルベッコの変法イ-グル培地(DME)に代え,6等分した肺を96ウエルプレートのウエルに入れ,ウイルスを接種したところ,一度は明瞭な増殖曲線を得ることができた.しかし,この成績も再現性に乏しかった.培養した肺を組織学的に調べたところ,広範囲にわたり壊死に陥っていることが判明した.すなわち,肺組織片を96ウエルプレートの1ウエルに0.1mlの培養液と共に入れても,組織片は底面に密着して沈み,培養液が肺組織内に浸透しないため,上皮細胞が変性し,壊死に陥るためウイルスが増殖し得る状態で維持されないことが示唆された.そこでウエルの底にプラスチックメッシュを敷き,組織片を底面に密着させないようにして培養を試みたがウイルス増殖は認められなかった.次にプレートを24ウエルのものに代え,カルチャーインサートに肺組織片を置き,1mlの培養液を加え,ウイルスを接種すると,再現性よくウイルス増殖を観察することができた.組織学的にも細胞が比較的良好に維持され,ウイルス抗原も確認することができた.培養液は199よりDMEの方が高いウイルス価を得ることができた.カルチャーインサートを用いないとウイルス増殖は認められなかった.以上の実験から,マウス肺をおよそ6等分した組織をセンダイウイルスが増殖できるようにプレートウエル内で維持するには,24ウエルプレートとカルチャーインサートを用い,1mlのDME中に底面から浮かした状態で培養する必要があることが示された.ここに到達するまでに数々の試行錯誤を重ね多大な時間を要し,当初計画していた抗ウイルス免疫の検討までには到らなかった.しかし,肺組織片で再現性高くウイルスを増殖させる方法が確立されたので,今後この系を用いて抗ウイルス免疫を検討していく.
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