研究概要 |
ヒドロキシアパタイト(HAP)微粒子と部分安定化ジルコニア(PSZ)微粒子を単に従来の粉体混合法を用いて混合し、加圧成形・焼結した場合、HAPの一部がα型リン酸三カルシウム(α-TCP)に変化し,同時にジルコニアの相変化が起きる。また,この場合,焼結体の割断面または研磨面におけるHAPだけの領域の面積が十分ではなく,そのためHAPが本来有している骨組織親和性が十分には発現しないことが予想される。さらにこの場合,混合が不十分であったり,2成分の再分離が起こったりして焼結体の構造が不均質になり,その結果として破壊靱性が十分には向上しないとの報告がある。本研究は上記問題点を解決するために行った。高速気流中衝撃法によって調製したHAP(球状,平均粒径:9.3μm)PSZ(不定形,平均粒径:0.1μm)複合化微粒子(PSZ微粒子層による球状HAP微粒子の被覆)の焼結体を作製しその内部構造,組成変化,破壊靱性などについて検討し,以下のことを明らかにした。1.焼結体内部では,PSZが三次元網目構造をとる連続相として存在し,その中にHAP微粒子が独立的に存在した。この構造により,PSZの優れた破壊靱性が引き継がれることになる。2.焼結体の割断面には,相対的に面積の大きいHAPだけの領域が存在し,HAPの骨組織親和性が引き継がれている可能性が強く示唆された。3.一軸加圧および冷間等方圧プレスによる成形体の焼結過程で,HAPの一部がα-TCPに変化した。変化の割合はPSZ量の増大に伴って増加した。HAPのみの場合は,X線回折分析では変化が認められなかった。4.ホットプレス焼結体では,いずれのHAP/PSZ重量比においても,X線回折的にはα-TCPの生成は認められなかった。5.破壊靱性はPSZ量の増大に伴って向上する傾向にあり,HAP/PSZ重量比=10/10では,ホットプレス焼結体で2.8MPa m^<0.5>という高い値が得られた。
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