研究概要 |
眼科臨床診断で活用されている眼電位図(EOG)の測定に際して,その誤差の大きな要因となる電位検出時の電極位置のズレおよび他眼からの電位影響(クロストーク)などの特性を実測し,理論的な解析を試みた。 EOGは今回導入したポリグラフで増幅し,オシロレコーダに連続波形として出力し,同時にメモリカードに数値データとして記録してパソコンに入力できるシステムを作成した。本装置は軽量かつ可搬容易なので,医療現場での測定が簡便に実施できる。EOGの特性測定では,電極位置を外眼角からこめかみまでの間に2〜3ヶ所とり,眼球を10〜100°までの範囲で衝動運動を起こさせ,眼球運動幅とEOG振幅との特性を求めた。クロストークは片眼を正面固視させた状態で,他眼を吸引コンクトレンズにより強制運動をさせたときの,正面視させた側のEOGを測定して求めた(学会報告)。眼球を,角膜が正で網膜側が負の電気双極子と考えて,眼球を正面視からδだけ回転させたとき,その中心からrだけ離れた電極位置の電位(EOG)を計算した。計算値を実測値と対応させるために,δを0〜180°まで変えて電極電位を計算した。ここで,双極子法から求めたパラメータQ/(4πε)[Qは電荷,εは誘電率]を適当に設定すると,対象眼の電極位置を与えて計算値と実測特性とをよく合わせることができた。また,他眼からこの電極位置までの距離を与えて電位影響を計算すると,同じQの値に対して実測EOG電位(クロストーク)がよく模擬できた。 以上より,眼球を電気双極子とみなして顔面の電極位置での電位が計算できることがわかった。なお,電荷は継続的に眼球内から補給されると仮定しないと眼球周辺組織を通して他へ消失することになる。したがって、生理学的な知見にたてば,眼球を電池と考えたほうがよい。今後,この眼球電池モデルの解析を検討しつつある。
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