研究概要 |
本研究では,被検者の眼前57cmに提示したコンピュータディスプレイ上の視標の動きに応じて,被検者が操作器を操作し,視標の移動に操作器の動きを合致させる視覚誘導性追跡運動課題を低視力児・者に実施し,その運動軌跡について定性的に分析するとともに,視標の移動が開始してから被検者が操作器を操作し始めるまでの反応時間と眼球運動の反応時間について測定を行なった。 被検者は,晴眼男性1名(年齢32歳)と低視力児・者10名(男性7名,弱視女性3名;年齢18〜49歳)である。刺激として,ディスプレイ上に視標(矩形:縦4.3cm,横0.8cm)を提示した。視標はファンクションジェネレータの制御信号をADコンバータを介してコンピュータに取り込み,制御した。視標は,周波数0.25Hzで被検者の正中線を中心にして正弦波状に水平方向に移動した。さらに,自作の操作器に連動する追跡標(矩形:縦2.4cm,横0.4cm)をディスプレイの視標の下方に提示した。被検者は追跡標ができるだけ正確に視標の移動を追跡するように右腕を用いて操作器を操作した。この操作器の動きを電圧の変化として出力し,ADコンバータを介してコンピュータに取り込み,分析した。また,操作中の眼球運動をEOG法を用いて測定し,ADコンバータを介してコンピュータに取り込み,分析した。 その結果,移動する視標に対する低視力児・者の前腕運動による追跡は定性的には晴眼者と顕著な差異が認められなかった。しかし,反応時間については,前腕運動と眼球運動のいずれについても,晴眼者と比較すると低視力児・者では長い傾向が認められた。さらに,低視力児・者においては提示した刺激のコントラストの特性(黒背景上に白い刺激を提示と白背景上に黒い刺激を提示)により反応時間に差異が認められ,黒背景上に白い刺激を提示した条件の方が反応時間は短い傾向を示すことがわかった。
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