研究概要 |
本研究は、「自己の視点を操作する能力」を測定するための手法を考案し、この能力が2,3,歳児においてどの程度獲得されているのかを明らかにすることを目的とした。 2,3歳児にもなじみのある人の″顔″を刺激とし、顔刺激を回転して提示した場合にも、それは正立した顔の像として認識されるであろうと考えた。この仮定のもとに、以下の課題が考案された。直径80cmの円形のベニア板の中心から10cmずつ離れたところに半径5cmの穴を開け、これらの穴を目とみなして板上に顔を描き、刺激とした。これを縦横55cm、高さ15cmの台に載せた。左右の目は手元のスイッチによって光るようにし、同時に2種の異なるブザ-音が鳴るようにした。顔刺激は回転させることができる。まず顔刺激を子どもの方向(A)に正立して向け、次いで90度(もしくは180度、270度)回転させた後、ブサ-音とともに左右どちらかの目を点灯した。その後再び顔刺激をAに回して戻し、先ほどのブザ-音を再提示した。課題は、この時点灯すべき側の目を指摘することである。子どもの動作(特に指さし)や表情(特に視線の方向)、会話等に注目し、ビデオ録画を3名の評定者に後ほど見せ、反応内容をカテゴリーに分類してもらった。判定は、3名の内2名以上の評定が一致した時はその評定を採用し、3名とも不一致の時には判定不可能とした。なお、被験児は2,3歳児16名であった。 被験者中、完全に正答した者はいなかったが、3歳児のうち3名が90,270度方向への回転に対して、ほぼ正しい反応を示すことができた。この者達でも、180度方向への反応は不完全であった。一方、2歳児は全て課題に失敗した。このことより、C.A.3歳を越える者に「自己の視点を操作する能力」を獲得した者がいることを確認することができた。ただ、実験課題の内容を理解できなかった者も数名おり、手続きの改善が今後の課題とされた。
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