研究課題/領域番号 |
06710042
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
実験系心理学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
友永 雅己 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (70237139)
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
1994年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円)
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キーワード | チンパンジー / 錯誤結合 / テクスチャ弁別 / 注意 / 比較認知 |
研究概要 |
本年度は、「類人猿の視知覚情報処理における前注意的処理過程に関する比較認知的研究:視覚探索課題とテクスチャ弁別課題の比較を通して」という題目のもとで、特徴統合にかかわる2つの現象に着目して実験研究を行った。 (1)チンパンジーにおけるポインティング型テクスチャ弁別 この課題では、画面上に要素図形を8×16(縦×横)ないし、16×32配置し、そのうちの3×3ないし6×6で区切られた異なるテクスチャ領域を検出し、そこをポインティングするということを1頭のチンパンジーに訓練した。まず、色や形の違いによってテクスチャが分離されているような課題で訓練を行ったが、このような課題では被験体の成績は高く安定していた。つぎに、視覚探索課題において探索非対称性を生じさせるCとOを用いて実験を行った。視覚探索ではCが標的の場合、探索速度が速くかつ妨害刺激(O)の数にかかわらず一定であるのに対し(並列的探索)、Oが標的の場合は探索速度は妨害刺激(C)の数が増えるのに応じて増大する。そこで、今回はテクスチャ弁別課題においてCが標的領域になる場合とOが標的領域になる場合で成績の比較を行った。その結果、訓練当初は探索非対称性と同様Cが標的領域である方が検出成績は良かったものの、訓練をへるにつれて、両者の成績に差が認められなくなった。次に、Beck(1966)で用いた正立のTと45度傾いたTおよびLの3つの図形を用いて実験をおこなった。これらの図形の場合、線分方向を共有する正立TとLのテクスチャ分離が難しいことが知られている。結果はヒトでの実験同様、正立Tによる背景テクスチャ中の標的テクスチャの検出は傾いたTの方がLよりも容易であった。今後、このテクスチャ弁別課題を利用して、Ramachandranらのshape from shadingなどの単眼立体視が可能な図形を用いて、3次元情報の前注意的処理について検討を行う予定である。 (2)チンパンジーにおける錯誤結合:見本合わせ法を利用して 錯誤結合(illusory conjunctions)とは、注意を十分に向けることができないような状況を設定してやる(例えば、非常に短時間しか探索画面を呈示しない)と複数の特徴が正しく統合されず、実際には存在しなかったものが見えたように知覚してしまうような現象を指す。例えば、赤い○と緑の○と赤い×からなる探索画面を短時間呈示すると、そこに緑の×を知覚してしまうことがある。今回の実験では、1頭のチンパンジーに対し、見本合わせ法を利用して錯誤結合を調べるための訓練を行った。刺激としては赤、青、緑に着色されたS、X、O、Tの計12種類の図形を用いた。まず、タッチスクリーン装着のCRTの下段に見本刺激(着色されたSないしX)が一定時間呈示される。見本刺激消失後、上段に3色に着色されたSとXの計6種類の図形が選択刺激として呈示される。被験体が見本刺激と同じ図形に触れると正解としてチャイムが鳴り、報酬が与えられた。この訓練によってSとXが標的刺激であることを学習させた後、見本刺激呈示時に妨害刺激(着色されたOないしT)を標的刺激と同時に呈示することによって、ヒトにおける錯誤結合実験に等価な状況を作り出すことにした。現在は、第1段階において見本刺激の呈示時間を0.5秒から0.2ないし、0.1秒に短縮する訓練を続行中である。
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