宮城県の農村部のTJ町における地域調査によって明らかになった高齢者のグループには、ゲートボールやパークゴルフといった軽運動を共に行うもの、「御詠歌」を詠う集まりなどが認められた。これらのグループは強い地縁的な結びつきを基に形成されており、日常的な「お茶のみ」行為等によって強化され、また社会的支援を提供する有力な源になっていると考えられる。 一方、高齢者における抑鬱・精神的な健康に関わる要因を探り、また特に社会的支援ネットワークがどのような役割を果しているかを明らかにすることを目的として、留置法による質問紙調査をTJ町に在住する高齢者を対象に実施した。従属変数は、(1)SDS(鬱状態自己評定尺度)、(2)TMI1(精神状態の尺度)、(3)TMI2(身体化症状の尺度)の3変数で、独立変数は、SOCIODEMOGRAPHIC、健康状態、コミュニケーション能力、家族との関り、ADL、日常生活、社会的支援ネットワークなどである。分析はx^2検定および数量化理論I類によって行った。 全ての従属変数に「“既往"」など健康に関わる変数は多く強い影響力を持っている事がまず注目される。また、「会話力」「理解力」などのコミュニケーションの能力、「地域行事への参加度」、「社会奉仕(の有無)」といった地域社会とのつながり、さらに「社会的支援」に示される他者から支えられているという認識といった、他者や社会との関わりに関する要因が強い影響力をもっていることが認められた。これらの中での「社会的支援」は、周囲からの働きかけにより操作可能な側面を多く有すると考えることができ、老人の精神的健康について介入を考えるとき、有効な視点となるであろう。
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